ここがどこであろうと僕は

翠帳紅閨にて

メンヘラ、サブカル、無職の満貫です。

これからどうなるの?原宿、そしてミドリブラックモア

zipperが休刊を発表した。私はzipperを原宿の広報誌のようなものだと思っていて、親や校則が厳しくても、田舎に住んでいても、原宿を知ることができ、多くの中高生が自由で一番自分らしくいられるカワイイ原宿に憧れるきっかけとしてzipperは存在していたと思う。

ケラが休刊を発表した時と同様にツイッターではzipperの休刊を惜しむ声が相次ぎ、それと同時に原宿文化の衰退を危惧する声が多く見られた。

確かにここ5年の原宿は様子がおかしい。きゃりーぱみゅぱみゅのメジャーデビューと大物ギャルモデルの結婚、引退によるギャル文化の衰退により、「原宿」が一般的になっていた。いままで「誰かと同じ服を着れない」といった自意識が存在するひねくれ者が集う町だった原宿に、クラス委員長をするような、サッカー部のキャプテンと付き合うような普通の女の子が今までクレープを食べに来るだけだった原宿に服を買いに来るようになった。誰ともカブらないと思って買った目玉の缶バッチはクラスの三人とカブるし、急に派手なインナーカラーを入れる子も増えた。WEGOとスピンズは一時期コンビニより多いと言われるほどに原宿に店舗があったし、渋谷ギャルファッションのビックブランド、SLYとマウジーが入ったshelterがオープンしたりして、なんとなく「原宿儲かってきたんだな」と思った。

そんな様子で原宿が一般的になった事でいままでドロドロのアンダーグラウンドだった町に水が撒かれたように薄く広がっていった。最近では「原宿系」が何を指すのかいまいちわからなくなってきた。 

zipperやKERAの休刊はスマホ普及による紙媒体がどうのこうのもあるけどそういう背景があるなと思う。大量の一般人に飲み込まれてゴテゴテの原宿系の居場所は急になくなった。

そもそも原宿ファッションは「普通と違う」ことが大切で、これはファッション以外にも言える事だが「普通と違う」ことはそれなりに人生に摩擦が生じる。ゴス、ロリータは一着の値段が3万円とかが普通だし、スカートがかなり広がるので電車は座れないし、洗濯などもできないし、クリーニング代は普通の服より高かったりする。それでも着たい人が前は多かったから「原宿系」の人口はそれなりにいた。しかし今はそういう大量の一般人が原宿に現れた事によって盗撮されたり、悪く言われたり(そういう人は原宿が一般化する前からいたが一般化してからはそういう意見が目立つようになった)そもそも人が多すぎて原宿でゆっくりできなかったりなどその摩擦はどんどん大きくなって、ロリータに新規参入する人はどんどん減ってしまった。

そういう理由で世の中のロリータファッションを着ている人は減っている。そしてここからは私がロリータを着なくなった理由になる。

自分がロリータを着ていた理由はそのファッションが好きだからというより「普段の自分がカスだからそれをリセットして別人として生きるため」に着ていた。とにかく普通の服を着ている自分がいやで、ナチュラルメイクの自分がいやだった。だから派手な服と濃いメイクのロリータファッションは自分にとって救済だったし、ロリータファッションが好きだった。自分と同じ境遇の人がいるかもしれないからその人が手首を切る前に、部屋に引きこもる前に、比較的前向きな打開策としてロリータファッションという提案をするためにミスiDは頑張っていた。

しかしミスiD期間、ロリータを着ている自分を疑う事が時々あった。自分は無敵だと思っていたけど全然無敵じゃないし、そもそも何を着ても元の人格は同じなのだから着ただけで解決できるほど人生甘くないと思った。「自分に自信無さすぎ問題」の解決策としてロリータは不十分である事をこの手で証明してしまった。そして不十分なものを押し売るほどの図々しさは持っていなかった。

そうしてロリータを着る理由を失った私はほぼ「ロリータファッションという文化を途絶えさせてはいけない」という義務感だけでロリータを着ていた。おそらく今私と同じ年代でロリータを着ている人で若干の義務感を感じている人はいると思う。

しかし上記の理由もあってどんどんロリータが着にくくなっている状態でロリータを「無くしたくない」といって多少無理をしてでも着続ける事がそもそもファッションとして間違っていると思った。好きだからロリータを着る事と、ロリータを途絶えさせてはいけないから着る事では文化的側面ではかなり意味合いが変わってくる。義務感でロリータを着る事は不自然で、原宿文化の時間の流れを無理やり止める事になって、この後流行るファッションを殺す事になるからだ。

 なので私は無理なく着れる日が来るまで着ない事にした。仮にそれがロリータ衰退に加担する事になったとしても、それが本来あるべき姿だったのだと思う。悲しいけど、私も年をとるし、趣味だって変わる。あなたもそうでしょ?それなら私の事を責めないでほしい。私はコンテンツではないので。

そういう理由で私はロリータファッションをしばらく離れて、今は普通の服と普通のメイクと地毛で生活していて、だんだんそのままの姿の自分も好きになってきたと思う。自撮りはしなくなったけど。

最後に私個人の現状と今後についてですが、今は割と大学が楽しいので大学の軽音部の活動をそこそこ頑張っています。高校生ぶりにしっかり音楽を聞くようになって、結構音楽の事を考える事が多いです。その反面、自分ができる「表現」は文章によるものなので、文章を介して何かを表現し続けたいと考えています。

ここまで読んでくれてありがとうございました。まだもしもしボックスで働いているのでよかったら会いに来てください。主に毎週水曜日にいます。